社交不安障害

これから必ず注目される精神疾患です。

人前で話をする時などに過剰に緊張する人がいます。今まで、これをあたり前のことだと思っている人が大部分でしたが、緊張の程度が強く、学校や職場でなんとか耐えている人、苦痛を感じて仕事に困難を感じている人、更に様々なことを不安に感じたり、恐怖を感じることで、家庭にひきこもっている人まで居ることが分かってきて、これは、大問題だぞと精神神経学会でも言われるようになりました。

(1)社交不安障害の定義

2008年に日本精神神経学会で日本語訳が社会不安障害から社交不安障害に変更されました。英語はsocial anxiety disorderといいます。その略語でSADとも言われます。最近TVのコマーシャルでSADという文字が時々でてきます。

さて、SADの定義を今、日本で用いられている分類法DSM-Ⅳ-TRで書いてみますと下記のようになります。

A.よく知らない人達の前で他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況または行

      為をするという状況に対する顕著で持続的な恐怖。その人は、自分が恥をかか

      されたり、恥ずかしい思いをしたりするような形で行動(または不安症状を呈した

      り)することを恐れる。

B.恐怖している社会的状況への暴露によって、ほとんど必ず不安反応が誘発さ

     れ、それは状況依存性、または状況誘発性のパニック発作の形をとることがある。

C.その人は、恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している。

D.恐怖している社会的状況または行為をする状況は回避されているか、強い不安

       または苦痛を感じながら耐え忍んでいる。

E.恐怖している社会的状況または行為をする状況の回避、不安を伴う予期、また

      は苦痛のために、その人の正常な毎日の生活習慣、職業上の(学業上の)機

     能、または社会活動、他者との関係が障害されており、そのために著しい苦痛

     を感じている。

F.18歳未満の人の場合、持続期間は少なくとも6カ月である。

G.その恐怖または回避は、物質(例:乱用薬物)または一般身体疾患の直接的な

       生理学的作用によるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない。

H.一般身体疾患または他の精神疾患が存在している場合、基準Aの恐怖はそれ

      に関連がない。

SAD発生率は、アメリカでは6.8%、EUは1.2%、日本では0.7%と報告されています。なぜこんなに違うのかということですが、日本と欧米文化や政治、経済の違いを考慮に入れても違い過ぎます。私が実際、患者さんをよく見てみますと、日本は0.7%の少なくとも5倍は居ると思われます。SADという概念が、日本の精神科医にまだあまり認められていないからだと思います。ちなみに他の精神疾患の発生率は世界ほぼ共通で不安障害7~8%、うつ病性障害3~4%、統合失調症1%となっています。

SADの平均発病年齢は10.0歳~12.5歳です。ですから、小学5~6年生から中学1年生頃と、思春期に入ったばかりの頃になります。性差は女>男(2:1)と言われています。SADに他の精神疾患がしばしば合併します。SAD+パニック発作、SAD+うつ病性障害などが多く認められます。SADは重症のものになると、不登校、出社拒否(出社できない)などの原因となります。SADの大きな問題のひとつとして、SADは若者(40歳以下)の自殺の大きな原因と考えられることです。40歳以下の男性の死亡原因の第一が自殺で、そのうちの大きな原因がSADであるということは、非常に重大な問題であると容易に考えられます。

(2)SADの診断

SADの診断は、前の定義にあてはまっているかどうかになります。リーボビッツという人が、様々に質問をして、SADかどうか、SADならその程度を知ろうとテストを考案しました。これを日本精神神経学会が、日本語版に書き直したものを発表しました。

(3)SADの治療

私たち人は、生まれてある程度成長すると、周りは全て不安なことだらけです。しかし、何か行動して不安なことをうまく減らすことができると、「できた」と感じ、それが何回か繰り返されると「もうできる」と不安が自信に変わっていきます。不安を自信に変えることが続くと、大人になった時には、殆どの「場面」で不安にならないようになっています。しかし、大人になってもまだ、いくつかの「場面」で、不安になる人がいることがあります。不安を減らす事に成功しなかった大人が幾人かは残るのです。

そのような大人は、ある場面になると不安になり、じっとその不安に耐えたり、辛抱できなくなって逃げ出したりするのです。

SADの治療は、不安を、「何かをする事」によって、うまく軽減できた体験を持たせて、その成功体験を重ねて自信にすることが基本となります。

例えば、職場の会議で緊張してうまく話が出来ない人の場合、会議の前に、「深呼吸をする」「体操をする」「痛み刺激を加える」「抗不安薬を服用する」などによって緊張が改善できれば、その改善した物事を繰り返して、自信をつけさせるのです。簡単ではありませんが、根気よく不安を改善できることを探すことで、SADを軽快の方向へ向けることができるようになります。

このような方向性で物事に接し、その上で薬物療法を追加します。SADの薬物療法は、今のところ下記の薬が承認されています。

フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)

パロキセチン(パキシル)

私は、薬物療法としてはこのような薬に抗不安剤の併用を行っています。

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